30秒でわかる、この記事の答え
- 答え入居者の承諾なしで、入居者がいるまま売れます
- 理由契約も敷金を返す義務も、そのまま買主に引き継がれるから
- まずやることある書類とない書類を分けるところから始める
あなたの状況から読む
- 書類がそろっていないそろえる書類と、無いときの対処へ
- 敷金の扱いが心配売買契約で決める敷金・家賃へ
- 入居者への伝え方に迷う通知の出し方と文例へ
- 管理会社に任せている管理会社との引き継ぎへ
「入居者がいるままアパートを売ると決めた。でも、敷金や契約書はどうすればいいのか分からない」
「入居者には、いつ、誰が、何と伝えればいいのか」
結論からお伝えします。
入居者がいるアパートは、入居者の承諾なしに売却できます。売ると、賃貸借契約も敷金を返す義務も、そのまま買主に引き継がれます。
売主がやることは、書類をそろえることと、売買契約で敷金・家賃・管理会社の扱いを決めること。
そして、決済のあとに買主と一緒に入居者へ通知することの3つです。
ことばの説明:決済
買主が代金を払い、売主が書類と鍵を渡して、売り買いを終える日のことです。同じ日に、持ち主が変わったことの登記もします。
入居者がいるまま売るときに、売主がやること
- 書類をそろえるレントロール・契約書・敷金の一覧
- 売買契約で決める敷金・家賃・管理会社の扱い
- 入居者へ通知決済のあと、買主と連名で
この記事では、入居者がいるまま売る(オーナーチェンジで売る)ときの手順を、準備から入居者への通知まで順番にお話しします。
立ち退きをするかどうか迷っている方は、先に築古アパートは立ち退きなしで売却できるをお読みください。
入居者の方に迷惑をかけずに売れるなら、そうしたいです。
入居者の方の暮らしは何も変わりません。変わるのは家賃の振込先と、連絡先くらいです。手順どおりに進めれば、入居者の方を不安にさせずに済みます。
この記事を読んで理解できること
- 入居者の承諾が要らない理由(民法・借地借家法)
- 売る前にそろえる書類と、書類が無いときの対処
- 売買契約で決めること(敷金・家賃・滞納・管理会社・固定資産税)
- 決済の日にやることと、登記が大事な理由
- 入居者への通知の出し方と、書くこと
- 管理会社・自主管理の場合の引き継ぎ
入居者がいるまま、入居者に知らせずに査定できます。まずは金額を確かめてください。
査定・ご相談は無料です。2営業日以内にご連絡します。
この記事の目次
入居者の承諾なしで売れる。契約も敷金も買主へ引き継がれる
入居者の方に、売ってもいいかを先に聞かないといけませんか。
法律上は要りません。持ち主が変わると、大家としての立場ごと買主に移るからです。
入居者がいる建物を売ると、大家の立場(賃貸人の地位)はそのまま買主に移ります。
民法と借地借家法(e-Gov法令検索)では、次のように定めています。
| 決まり | 中身 |
| 借地借家法31条 | 建物の賃貸借は、入居者が住んでいれば(建物の引渡しを受けていれば)、登記がなくても新しい持ち主に対して効力がある |
| 民法605条の2第1項 | そうした建物が売られると、賃貸人の地位は買主に移る |
| 民法605条の3 | 売主と買主の合意だけで、入居者の承諾がなくても賃貸人の地位を移せる |
| 民法605条の2第4項 | 敷金を返す義務と、入居者が払った修繕費などを返す義務は、買主が引き継ぐ |
| 民法605条の2第3項 | 買主は、所有権の移転登記をしないと、入居者に「自分が新しい大家だ」と主張できない(家賃を請求できない) |
つまり、入居者の家賃・契約期間・敷金などの条件は、持ち主が変わってもそのまま続きます。
入居者にとって、住まいの条件は何も変わりません。
だから売る前に入居者の同意をもらう必要はなく、売ることを事前に知らせる義務もありません。
持ち主が変わっても、入居者の暮らしは
- 家賃
- 契約期間
- 敷金
- 家賃の新しい振込先
- 新しい持ち主か管理会社の連絡先
入居者に「同意書」を求める必要はない
買主によっては、入居者に「賃貸人変更の同意書」への署名を求めることがあります。法律上は同意がなくても大家の立場は移るので、同意書は必須ではありません。入居者が署名をためらっても、売買には影響しません。
売る前にそろえる書類
親から引き継いだアパートで、書類がどこにあるか分かりません。
全部そろっていなくても売れます。まず、ある書類とない書類を分けるところから始めましょう。
オーナーチェンジで売るとき、買主は書類を見て家賃と契約の中身を確かめます。次の表の書類を集めてください。
| 書類 | 中身 | 無いときは |
| レントロール(家賃の一覧表) | 部屋ごとの家賃・共益費・敷金・契約の始まった日・更新日・滞納の有無 | 通帳の入金記録から作り直す。管理会社があれば作ってもらえる |
| 賃貸借契約書(全室分) | 契約の条件、特約、連帯保証人・保証会社 | 入居者の控えを見せてもらう。仲介した不動産会社に写しがないか聞く |
| 敷金の預かり一覧 | 部屋ごとに預かっている敷金の額 | 契約書の敷金欄から拾う。契約書も無ければ、入居時の入金記録を探す |
| 管理委託契約書 | 管理会社との契約の中身、解約の予告期間 | 管理会社に写しをもらう |
| 修繕の記録 | いつ、どこを、いくらで直したか | 分かる範囲でよい。領収書や見積書、管理会社の記録を集める |
| 固定資産税の納税通知書 | 土地・建物の評価額、税額 | 市区町村の税務課で評価証明書を取る |
| 登記簿・測量図・建物の図面 | 所有者、面積、境界 | 法務局で取れる。測量図は無ければ無いと伝える |
分からないことは、分からないと書いたままで構いません。無理に埋めた数字があとで違っていると、そのほうが揉めます。
とくに敷金の額は、あとで入居者に返すときに問題になるので、分かる範囲を正確に伝えてください。
書類集めの進め方
- 分けるある書類とない書類
- 集め直す通帳・契約書の控え・管理会社の写し
- そのまま伝える分からないことは分からないと
入居者に知られずに準備できるか
書類集めや査定は、入居者に知らせずに進められます。
買取なら、広告を出したり、入居中の部屋の中を見せてもらったりしなくても大丈夫です。
外観と共用部、空室があればその部屋を見て金額を出せることが多いです。
売買契約で決めておくこと

契約書には、ふつうの売買と何か違うことを書くんですか。
はい。入居者がいる売買では、お金の精算と、誰がいつから大家になるかを細かく決めておきます。ここを曖昧にすると、あとで揉めます。
入居者がいるアパートの売買契約では、ふつうの売買に加えて、次のことを決めておきます。
| 決めること | よくある決め方 |
| 賃貸人の地位の引き継ぎ | 決済の日(引き渡しの日)に、賃貸人の地位が買主に移ることを書く |
| 敷金 | 買主が返す義務を引き継ぐので、預かっている敷金の額を売買代金から差し引いて精算することが多い |
| 家賃 | 引き渡しの日を境に日割りで精算する。前払いで受け取っている翌月分は買主に渡す |
| 滞納している家賃 | 引き渡し前の滞納分は売主のものとして残すか、買主に引き継ぐかを決める |
| 管理会社との契約 | 買主が引き継ぐか、売主が解約するかを決める。解約なら予告期間と違約金を確かめる |
| 家賃保証会社との契約 | 買主に引き継げるかを保証会社に確かめる |
| 固定資産税・都市計画税 | その年の税は1月1日の持ち主(売主)に全額かかる。引き渡しの日を境に日割りで精算するのが慣行 |
| 建物の不具合の責任 | 分かっている不具合を書き出したうえで、責任を負う範囲と期間を決める |
敷金は「預かっている額」を正確に
民法622条の2では、敷金は、家賃などの支払いを担保するために入居者が預けるお金とされています。
退去して部屋を返したときに、未払いの家賃などを差し引いた残りを返すものです。
持ち主が変わると、この返す義務は買主に移ります。
だから買主は、「この部屋の敷金はいくらか」を必ず確かめます。
売主が敷金を差し引かずに売り、買主が退去のときに全額を返すことになれば、あとで売主に請求が来ることもあります。
預かっている敷金の額を部屋ごとに一覧にし、売買代金から差し引くのが、いちばん揉めない方法です。
敷金の精算のしかた
- 一覧にする部屋ごとに預かっている敷金の額
- 差し引く売買代金から敷金の額を引く
- 買主へ敷金を返す義務は買主が引き継ぐ
建物の不具合の責任は、どこまで負うか
売ったあとに、契約で約束していなかった雨漏りやシロアリが見つかることがあります。
そのとき売主は、契約不適合責任(契約と違う状態だったことの責任)を問われることがあります。
個人の売主どうしの売買では、責任を負う期間を短くしたり、負わないと決めたりすることもできます。
ただし、知っていて伝えなかった不具合は、責任を負わないと決めていても免れられません(民法572条)。
知っていて伝えていない不具合がある?
分かっている不具合は、すべて書き出して契約書に載せるのが、売主を守るいちばん確かな方法です。
不動産会社が買主になる買取では、売主の契約不適合責任は免責になります。
固定資産税の精算金は、売った値段に含まれる
固定資産税の日割り精算で買主から受け取るお金は、税金の計算では「売った値段の一部」として扱われます(国税庁 質疑応答事例)。売ったときの税金を計算するときは、この精算金を忘れずに入れてください。税金の詳しいことはアパート売却の税金でお話ししています。
敷金・家賃・管理会社の精算まで、売主さまの手間が少ない段取りでお引き受けします。
査定・ご相談は無料です。2営業日以内にご連絡します。
決済の日にやること
決済の日は、何を用意すればいいですか。
ふつうの売買の書類に加えて、入居者に関する書類と鍵を買主に渡します。
決済の日は、売主・買主・不動産会社・司法書士が集まり(または書類のやりとりで)、次のことを同じ日に行うのが一般的です。
| やること | 中身 |
| 代金の受け取り | 売買代金から、敷金・家賃・固定資産税の精算分を差し引いた額を受け取る |
| 所有権の移転登記 | 司法書士が登記を申請する。ローンが残っていれば、同じ日に返して抵当権を消す |
| 書類の引き渡し | 賃貸借契約書の原本、最新のレントロール、入居者の連絡先、管理会社との契約書、修繕の記録 |
| 鍵の引き渡し | 空室の鍵、共用部の鍵、合鍵。どの部屋の鍵かを分かるようにしておく |
民法605条の2第3項では、買主は所有権の移転登記をしないと、入居者に「新しい大家だ」と主張できないとされています。
ことばの説明:所有権の移転登記
持ち主が変わったことを、登記簿に書き換える手続きです。司法書士が申請し、これを済ませて買主ははじめて新しい大家だと言えます。
登記を決済の日に済ませることで、その月から買主が家賃を受け取れるようになります。
決済の日に登記を済ませた?
引き渡しの前に、入居状況を最新にする
契約から決済までの間に、退去や新しい入居があることもあります。
決済の直前に、レントロールを最新の状態に直して買主に渡してください。退去の予告を受けていれば、それも伝えます。
入居者への通知の出し方

入居者の方には、いつ、誰が知らせるんですか。
決済が終わったらすぐに、売主と買主の連名で知らせるのが一般的です。家賃の振込先が変わるので、次の家賃日の前に届くようにします。
入居者への通知は、売主と買主の連名で「賃貸人変更のお知らせ」として出すのが一般的です。
売主の名前が入っていることで、入居者は「知らない人から振込先の変更が来た」と不安にならずに済みます。
通知には、次のことを書いてください。
- 持ち主が変わったこと(いつから、誰に)
- 賃貸借契約の条件は変わらないこと
- 預けている敷金は、新しい持ち主が引き継いだこと
- 家賃の新しい振込先と、何月分から変わるか
- 今後の連絡先(新しい持ち主、または管理会社)
通知の文例
たとえば、次のような書き方です。
賃貸人変更のお知らせ(例)
拝啓 平素よりお世話になっております。このたび、〇〇アパートの所有者が、〇年〇月〇日付で(旧所有者)から(新所有者)に変わりました。賃貸借契約の内容に変更はなく、お預かりしている敷金は新所有者が引き継いでおります。〇月分以降の家賃は、下記の口座にお振り込みください。今後のお問い合わせは下記までお願いいたします。(振込先・連絡先) 旧所有者 氏名 新所有者 氏名
郵送のほか、ポストへの投函や手渡しでも構いません。
家賃を口座振替や保証会社経由で払っている入居者には、手続きが切り替わる月を個別に伝えてください。
入居者から質問が来たら
通知を受け取った入居者から「家賃は上がるのか」「出ていかないといけないのか」と聞かれることがあります。
契約の条件は変わらないこと、住み続けてよいことを、はっきり伝えてください。
連絡先を新しい持ち主か管理会社に一本化しておくと、入居者が迷いません。
前の振込先に家賃が入ってしまったら
通知が届いても、しばらく前の口座に振り込む入居者はいます。
売主の口座は数か月は閉じずに残しておき、引き渡し後の家賃が入ったら買主に渡す、と売買契約で決めておくと安心です。
決済のあとの流れ
- 決済の日代金・登記・書類と鍵の引き渡し
- 次の家賃日の前連名の通知が入居者に届くようにする
- 数か月売主の口座は閉じずに残す
管理会社と、自主管理の場合の引き継ぎ
管理会社に任せています。売ったら、管理会社はどうなるんでしょうか。
買主が引き続き頼むか、別の会社にするかで変わります。どちらにしても、売る前に管理会社に伝えておくと引き継ぎがスムーズです。
国土交通省の「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」という資料があります。
売却で賃貸人が変わったときの管理の契約について、次のように整理されています。
| 場合 | 扱い |
| 管理の契約をそのまま買主が引き継ぐ場合 | 管理会社は、新しい持ち主に契約の内容が分かる書類を渡すことが望ましい |
| 引き継ぐ特約がなく、買主と新しく契約する場合 | 新しい契約として、管理会社は買主に重要事項の説明と書面の交付をしなければならない |
売主として確かめておくのは、管理委託契約の解約の予告期間と、解約するときの費用です。
ことばの説明:解約の予告期間
管理会社に「やめます」と伝えてから、契約が終わるまでに空けておく期間です。足りないと、売ったあとも管理料がかかることがあります。
買主が別の会社に頼む場合、予告期間が足りないと、売ったあとも管理料を払うことになりかねません。
売ったあとの管理会社
- 契約の内容が分かる書類を買主に渡す
- 解約の予告期間と費用を確かめる
- 早めに管理会社へ伝える
売ることが決まったら、早めに管理会社へ伝えてください。
自主管理だった場合
管理会社を使わず、ご自分や親御さんが管理していた場合は、「いつもの管理」の中身を買主に書いて渡してください。
入居者の連絡先、家賃の入金の記録、鍵、ゴミ出しや共用部の清掃をどうしていたか、などです。
入居者が困らないように引き継ぐことが、売ったあとのトラブルを防ぎます。
リハコに売る場合の流れ
リハコさんに買ってもらう場合も、同じ手順ですか。
手順は同じですが、入居者の方へのご案内や、書類が足りないところの組み立ては、私たちが一緒にやります。
リハコは、古いアパートを買い取り、直して、その街で部屋を探している人に貸し続けている会社です。
これまでにアパートを23件買い取ってきました(うち神奈川14件)。
入居中の部屋は入居者に住み続けていただいたまま引き継ぎ、空室は直して貸し出します。
| 流れ | 中身 |
| ご相談・査定 | 所在地・戸数・入居状況・家賃を分かる範囲で教えてください。入居者に知らせずに査定します |
| 書類の確認 | 手元にある書類をお預かりし、足りないところは一緒に組み立て直します |
| 金額のご提示 | 直したあとの家賃と工事費、土地の値段から出した根拠と一緒にお伝えします |
| 売買契約 | 敷金・家賃・管理会社の扱いを、この記事の内容に沿って決めます |
| 決済・引き渡し | 代金のお支払いと登記。書類と鍵をお預かりします |
| 入居者へのご案内 | 連名の通知を用意し、入居者の方からのお問い合わせにはリハコが対応します |
入居者がいるから、書類がそろわないから、と売るのを先延ばしにする必要はありません。
入居者の方の暮らしを守ったまま、アパートを次の持ち主に引き継ぐ。その段取りを、一緒に進めさせてください。
売れない理由が気になる方はオーナーチェンジ物件が売れない理由もあわせてお読みください。
読み終えたら、まずやること
- 手元にある書類と、無い書類を分けてみる
- 部屋ごとに預かっている敷金の額を書き出す
- 入居者に知らせずに、今のままで査定を頼む
よくある質問
入居者がいるままアパートを売るのに、入居者の同意は要りますか?
要りません。売ると大家の立場は買主に移り、法律上、入居者の承諾は必要ないからです。
家賃・契約期間・敷金などの条件はそのまま続き、売ることを事前に知らせる義務もありません。
入居者から預かっている敷金は、アパートを売るとどうなりますか?
敷金を返す義務は買主に引き継がれます。預かっている額を売買代金から差し引いて精算することが多いです。
部屋ごとの敷金の額を一覧にして正確に伝えるのが、いちばん揉めない方法です。
売ったことは、いつ誰が入居者に知らせればいいですか?
決済が終わったらすぐ、売主と買主の連名で知らせるのが一般的です。
家賃の振込先が変わるので、次の家賃日の前に届くようにします。
通知には、持ち主が変わったこと、契約の条件は変わらないこと、新しい振込先と連絡先を書きます。
売り方の全体像は、築古アパートの売却・買取のまとめでご案内しています。
入居者の暮らしはそのままに、アパートを引き継ぎます。立ち退きも、雨漏りの修理も要りません。
査定・ご相談は無料です。2営業日以内にご連絡します。




