30秒でわかる、この記事の答え
- 答え売っただけで、入居者が追い出されることはありません
- 理由契約も敷金も買主に引き継がれ、持ち主の交代は退去の理由にならないから
- まずやること買主が買ったあと、何に使うつもりかを確かめる
あなたの状況から読む
- 契約がどうなるか心配売ったあとの契約・敷金へ
- 退去を言われないか退去を求められるときへ
- 買主の選び方を知りたい買主に確かめることへ
- 入居者への伝え方に迷う迷惑をかけない売り方へ
「長く住んでくれている入居者さんがいる。アパートを売ったら、新しい持ち主に追い出されてしまわないか」
「売りたいけれど、入居者に迷惑はかけたくない」
結論からお伝えします。
アパートを売っただけで、入居者が追い出されることはありません。貸主の立場も敷金も、そのまま買主に引き継がれます。
ことばの説明:敷金
入居者が部屋を借りるときに、大家さんへ預けるお金です。出ていくときに返す義務があり、売ると買主が引き継ぎます。
新しい持ち主が入居者に出ていってもらうには、借地借家法の「正当の事由」が要り、持ち主が変わったことはその理由になりません。
ただ、法律で守られていても、退去のお願いをされること自体は起こりえます。
入居者に迷惑をかけたくないなら、「誰が、何のために買うのか」を確かめて売ることです。
「オーナーチェンジ 追い出し」で検索すると、買った人が入居者に出ていってもらう方法を解説した記事が多く出てきます。
ことばの説明:オーナーチェンジ
入居者がいるまま、アパートの持ち主だけが変わる売り方のことです。入居者の契約は、そのまま新しい持ち主に引き継がれます。
この記事はその反対側、入居者を守りたい売主さんに向けたものです。
売ったあと入居者がどうなるのかを法律の条文で確かめ、迷惑をかけずに売る方法をお話しします。
20年以上住んでくれている高齢の入居者さんがいて、売ったらその方が困るのではと、踏み切れずにいます。
その心配は、売主さんにしかできない大切な心配です。まず法律がどう守っているかを確かめ、そのうえで買主を選びましょう。
この記事を読んで理解できること
- 売ったあと、入居者の契約・家賃・敷金がどうなるか
- 新しい持ち主が退去を求められるのは、どんなときか
- 「追い出し」を考える買主がいるのは、なぜか
- 入居者に迷惑をかけずに売るために、売主が確かめること
- 入居者に売ることをいつ、どう伝えるか
この記事の目次
売ったあと、入居者はどうなるか
売ったら、今の賃貸借契約は終わってしまうんですか。
終わりません。同じ契約のまま、貸主の名前だけが変わります。
入居者がいるまま建物を売ると、入居者との賃貸借契約はそのまま新しい持ち主に引き継がれます。
これは契約書に書いてあるかどうかではなく、法律で決まっていることです。
| 法律 | 定めていること |
| 借地借家法第31条 | 建物の賃貸借は、登記がなくても、入居者が建物の引き渡しを受けていれば、その後に建物を買った人に対しても効力がある |
| 民法第605条の2第1項 | 賃貸借の対抗要件を備えた不動産が売られたときは、貸主の立場は買主に移る |
| 民法第605条の2第4項 | 貸主の立場が移ったときは、敷金を返す義務も買主が引き継ぐ |
| 民法第605条の3 | 貸主の立場は、入居者の承諾がなくても、売主と買主の合意で買主に移せる |
つまり、入居者がすでに住んでいれば、新しい持ち主は「前の持ち主との契約は知らない」とは言えません。
家賃、契約期間、更新の条件、敷金。すべて今の契約のまま、新しい持ち主が貸主になります。
入居者が新しく契約を結び直したり、敷金を払い直したりする必要もありません。
条文は、借地借家法(e-Gov法令検索)と民法(e-Gov法令検索)で確かめられます。
家賃の振込先だけが変わる
入居者にとって変わるのは、家賃の振込先と、困ったときの連絡先くらいです。
ただし民法第605条の2第3項では、新しい持ち主が貸主の立場を入居者に主張するには、所有権の移転の登記が必要とされています。
入居者を混乱させない順番は、登記が終わってからのお知らせです。
売主と買主の連名で「持ち主が変わりました」「振込先はこちらです」と知らせます。
売ったあと、入居者にとって変わること
- 家賃
- 契約期間・更新の条件
- 敷金
- 家賃の振込先
- 困ったときの連絡先
売ったあとの入居者へのお知らせまで、こちらで引き受けます。まずは金額からご確認ください。
査定・ご相談は無料です。2営業日以内にご連絡します。
新しい持ち主が、退去を求められるのはどんなときか
それでも、新しい持ち主が「出ていってほしい」と言い出したら、断れないのでは。
普通の賃貸借契約なら、入居者は断れます。貸主の都合だけで出ていってもらうことは、法律が認めていません。
新しい持ち主が入居者に出ていってもらう方法は、大きく3つです。
「契約の更新を断る」「解約を申し入れる」「契約違反で解除する」です。
どれも、法律で条件が決められています。
| 方法 | 法律の条件 | 売ったことが理由になるか |
| 更新を断る | 借地借家法第26条:期間満了の1年前から6か月前までに通知しなければ、同じ条件で更新したものとみなされる。第28条:正当の事由がなければ、更新を断れない | ならない |
| 解約を申し入れる | 借地借家法第27条:申し入れから6か月たって終わる。これも第28条の正当の事由が要る | ならない |
| 契約違反で解除する | 民法第541条:家賃の滞納などがあり、期間を決めて催促しても払われないとき。ただし違反が軽いときは解除できない | ならない(入居者側の違反が理由) |
「正当の事由」とは
借地借家法第28条では、正当の事由があるかどうかを、次のことを考え合わせて判断するとしています。
- 貸主と入居者、それぞれが建物を使う必要がどれくらいあるか
- これまでの賃貸借の経過(どれくらい長く、どう住んできたか)
- 建物の利用状況と、建物の今の状態
- 貸主が立退料などのお金を払うと申し出ているか
ことばの説明:立退料
入居者に出ていってもらうときに、貸主が払うお金です。合意のうえで出ていってもらう話し合いで示されます。
持ち主が変わったこと、新しい持ち主が高く貸したいことは、ここに入りません。
正当の事由で考えること
- 建物を使う必要
- これまでの賃貸借の経過
- 建物の利用状況と今の状態
- 立退料などの申し出
- 持ち主が変わったこと
- 高く貸したいこと
長く住んでいる入居者ほど、住み続ける必要が重く見られます。
そして借地借家法第30条では、これらのルールに反する特約で入居者に不利なものは無効としています。
「売ったら出ていく」という約束を契約書に入れても、入居者を縛れないということです。
例外は「定期借家契約」
例外は、借地借家法第38条の定期建物賃貸借(定期借家契約)です。
書面で「更新がない」と定め、事前に書面を渡して説明した契約なら、期間が来れば契約は終わります。
ただし、期間が1年以上なら、貸主は期間が終わる1年前から6か月前までに通知が要ります。
「期間満了で終わります」と知らせなければ、終わりを入居者に主張できません。
築古アパートの入居者の多くは、普通の賃貸借契約です。
手元の契約書に「定期建物賃貸借」と書かれていないか、売る前に一度確かめてください。
契約書に「定期建物賃貸借」と書かれている?
定期借家の部屋がある場合は、そのことを買主にも入居者にも正しく伝えておくことが大切です。
「追い出し」を考える買主がいるのは、なぜか

法律で守られているなら、なぜ「追い出し」なんて言葉があるんでしょう。
入居者がいないほうが高く使える、と考える買主がいるからです。法律で守られていても、交渉を持ちかけることはできます。
法律上、入居者を一方的に追い出すことはできません。
それでも、立退料を払って合意のうえで出ていってもらう「交渉」をすることは、禁じられていません。
買主がこの交渉を考えるのは、主に次のような場合です。
| 買主の目的 | 入居者に起きうること |
| 建物を壊して、土地として売りたい・建て替えたい | 立退料を示されて、退去の交渉を持ちかけられる |
| 空けて自分で住みたい(区分マンションに多い) | 更新のタイミングで、退去のお願いをされる |
| 家賃を相場まで上げたい | 家賃の値上げを求められる。応じなければ話し合いが続く |
| 入居者のいるまま家賃収入を得たい | 基本的に何も変わらない |
入居者は法律で守られていますが、交渉を持ちかけられること自体が、入居者にとっては大きな負担です。
高齢の方や、長く住んで地域になじんでいる方ならなおさらです。売主にできるのは、売る前に買主の目的を確かめることです。
売る前に、買主に確かめたいこと
- 買ったあと、アパートとして貸し続けるつもりか。建て替えや土地としての転売を考えていないか
- 入居中の部屋の家賃や契約の条件を、変えるつもりはあるか
- 入居者への対応や管理は、誰がするのか(自分で管理するのか、管理会社に任せるのか)
- 空いている部屋は、直して貸すつもりか
売ったあとの使い方を、売主が契約で縛ることはできません。
ですが、買主の答え方を聞けば、入居者をどう扱うつもりかはおおよそ分かります。
買ったあとも、アパートとして貸し続ける?
仲介で売る場合も、担当者にこの点を買主に聞いてもらうよう頼めます。
入居者に迷惑をかけずに売るために
売ることを、入居者さんにはいつ伝えればいいですか。先に言っておくのが礼儀かと思っていました。
お気持ちは分かりますが、売ったあとで大丈夫です。先に伝えると、かえって不安にさせてしまうことがあります。
入居者に売ることを事前に知らせる義務はありません。
売る前に「売るかもしれない」と伝えると、「追い出されるのでは」と心配して、引っ越しを考え始める入居者もいます。
入居者を守りたいなら、決まってから、きちんとした形で知らせるほうが親切です。
入居者に知らせるまでの流れ
- 売る前知らせる義務はない。家賃・敷金・契約を一覧にする
- 売買契約敷金の額と、引き継ぐ契約の一覧を添える
- 引き渡しのあと売主と買主の連名で、持ち主・振込先・連絡先を知らせる
| 時期 | 売主がすること |
| 売る前 | 部屋ごとの家賃・契約期間・敷金・更新の時期を一覧にする。定期借家の部屋があるか確かめる。滞納やトラブルがあれば記録をまとめる |
| 買主を選ぶとき | 買ったあとの使い方と、入居者への対応を聞く |
| 売買契約のとき | 敷金の額と、引き継ぐ賃貸借契約の一覧を契約書に添える |
| 引き渡しのあと | 売主と買主の連名で、持ち主が変わったこと・新しい振込先・連絡先を知らせる |
敷金は、買主に引き継ぐ額を正確にしておくことが、入居者を守ることにつながります。
敷金の額があいまいだと、入居者が退去するときに返ってくる額をめぐって、新しい持ち主ともめる原因になります。
お知らせの文例や、管理会社の引き継ぎ方は入居者がいるアパートを売却する手順で詳しくお話ししています。
立ち退いてもらってから売る、はおすすめしない
「迷惑をかけるくらいなら、売る前に自分で立ち退きをお願いしよう」と考える売主さんもいます。
ですが、売主が立ち退きを求める場合も、同じ借地借家法第28条の正当の事由が要り、話し合いが年単位になることもあります。
入居者にとっても、売主にとっても負担が大きい方法です。入居者がいるまま売った場合と比べてから決めてください。
立ち退いてもらってから売る/いるまま売る
- 話し合いが年単位になることも
- 入居者にも売主にも負担が大きい
- 立ち退きのお願いが要らない
- 家賃・敷金も買主が引き継ぐ
比べ方は築古アパートは立ち退きなしで売却できるにまとめています。
入居者が心配すること、売主が答えられること
持ち主が変わったお知らせを出したら、入居者さんからいろいろ聞かれそうです。
聞かれることは、だいたい決まっています。答えを先に用意しておけば、入居者さんも安心できます。
持ち主が変わると、入居者は「追い出されるのでは」のほかにも、家賃や敷金、困ったときの連絡先を心配します。
売主が法律の中身を知っておけば、お知らせの段階でその心配に答えられます。
| 入居者の心配 | 答え方 | 根拠 |
| 家賃は上がるのか | 家賃は今の契約のまま引き継がれる。持ち主が変わったことだけを理由に上がることはない | 民法第605条の2(貸主の立場がそのまま移る) |
| 新しい持ち主から値上げを言われたら | 値上げは税金や地価、周りの家賃との比較で不相当になったときに求められるもので、話し合いがつかなければ、入居者は相当と思う額を払っていればよい | 借地借家法第32条 |
| 敷金は返ってくるのか | 敷金を返す義務は、新しい持ち主が引き継ぐ。退去のときは新しい持ち主から返ってくる | 民法第605条の2第4項 |
| 契約を結び直す必要はあるか | 必要ない。今の契約書がそのまま有効 | 民法第605条の2・第605条の3 |
| 更新はどうなるのか | 今の契約書の更新の定めのまま。貸主が更新を断るには正当の事由が要る | 借地借家法第26条・第28条 |
借地借家法第32条は、将来に向かって家賃の増額や減額を求められる場合を定めています。
税金や土地・建物の価格の変動、周りの同じような建物の家賃と比べて不相当になったときです。
話し合いがつかないときは、裁判で増額が正当と決まるまで、入居者は自分が相当と思う額を払っていればよいとされています。
新しい持ち主が一方的に家賃を決められるわけではありません。
家賃の値上げを求められたとき
- 求められるとき税金や価格、周りの家賃と比べて不相当に
- 話し合いつかなければ裁判で決まる
- その間入居者は相当と思う額を払う
困ったときの連絡先を、はっきりさせておく
入居者にとって一番困るのは、給湯器が壊れた、水が漏れた、というときに誰に連絡すればいいか分からないことです。
お知らせには、新しい持ち主か管理会社の連絡先を必ず書いてもらってください。
管理会社がそのまま変わらないなら、そのことも書いておくと入居者は安心します。
家賃保証会社を使っている部屋がある場合は、保証の契約が新しい持ち主に引き継げるかどうかを、保証会社ごとに確かめておきます。
引き継げないと、入居者に新しい保証会社との契約をお願いすることになり、手間をかけてしまうからです。
リハコは、入居者に住み続けてもらう前提で買います
買取の会社に売ったら、結局は入居者を出して建て替えるのでは。
私たちは、買ったアパートを直して貸し続ける会社です。入居者さんは、私たちにとって一緒にアパートを支えてくれる方です。
リハコは、古いアパートや空き家を買い取り、自分で直して、その街で部屋を探している人に貸している会社です。
これまでにアパートを23件買い取ってきました。そのうち14件が神奈川県のアパートです。
リハコが買い取ったアパート
入居中の部屋は、今の契約のまま引き継ぎます。
空いている部屋から順に直して貸し出すので、入居者に立ち退きをお願いすることを前提にした買い方はしていません。
- 入居者がいるまま、立ち退きのお願いなしで買い取ります
- 家賃・契約の条件・敷金は、今の契約のまま引き継ぎます
- 持ち主が変わったことのご案内は、売主さんと連名でこちらが用意します
- 雨漏りや空室があっても、今の状態のまま買い取ります
長く住んでくれた入居者さんを気にかけるのは、よい大家さんだった証です。その気持ちごと、アパートを引き継がせてください。
読み終えたら、まずやること
- 手元の契約書に「定期建物賃貸借」と書かれていないか確かめる
- 部屋ごとの家賃・契約期間・敷金・更新の時期を一覧にする
- 家賃保証会社を使っている部屋があるか確かめる
よくある質問
アパートを売ったら、入居者は追い出されてしまいますか?
追い出されません。賃貸借契約は、そのまま新しい持ち主に引き継がれます。
新しい持ち主が退去を求めるには正当の事由が要り、持ち主が変わったことは理由になりません。
ただ、退去の交渉を考える買主もいるので、買ったあとの使い方を確かめて売ることが大切です。
売ったあと、入居者の家賃や敷金はどうなりますか?
今の契約のまま変わりません。敷金を返す義務も、新しい持ち主が引き継ぎます。
入居者が契約を結び直す必要もありません。変わるのは家賃の振込先と連絡先くらいです。
アパートを売ることは、入居者に前もって伝えるべきですか?
売ったあとで大丈夫です。事前に知らせる義務はありません。
先に伝えると、追い出されるのではと不安にさせることがあります。
引き渡しのあと、売主と買主の連名で、持ち主・振込先・連絡先が変わったことを知らせます。
売り方の全体像は、築古アパートの売却・買取のまとめでご案内しています。
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