不動産投資の利回りは何%が最低ライン?
税引き後で計算する戸建ての実例
「図面に利回り15%と書いてあるけれど、本当にそんなに残るの?」
「NISAの株と比べて、わざわざ不動産を持つ意味はある?」

(宅地建物取引士)
アパート14棟・戸建て41戸を自ら運用する現役投資家
先に、この記事の結論を3行で書いておく。
- 利回りは「表面」ではなく、経費と税金を引いた「税引き後の実質」で見る|図面に書かれた数字は、ほとんどが家賃を価格で割っただけの表面利回り
- 熊谷市の実例(購入180万円・リフォーム600万円・家賃月6万円)は、表面40%・工事費込み約9.2%・税引き後は約4.2%|経費は仮置きの数字で、減価償却を入れない控えめな計算
- 最低ラインは「税引き後の実質で、株の年4%を上回るか」|この前提だと、工事費込みの表面利回りで9%前後がようやく並ぶ水準になる
この記事は、株やNISAで資産運用をしていて、不動産にも分けたいと考えている会社員の方に向けて書いている。
利回りの記事は多いが、税金まで引いて株と同じ土俵で比べた記事は少ない。ここでは、リハコが再生した熊谷市の戸建ての数字を使って、税引き後まで計算してみる。

利回り10%以上の物件を探せばいい、とよく聞きます。それで合っていますか?
その10%が何で割った数字かによります。工事費と税金まで入れると、半分以下になることも珍しくありません。まず計算の仕方をそろえましょう。
この記事を読んで理解できること
- 表面利回り・実質利回り・税引き後利回りの違いと計算式
- 戸建て・空き家投資で、利回りの計算に入れ忘れやすい費用
- 熊谷市の実例を、表面から税引き後まで順に計算した結果
- 株の年4%と比べたときの、不動産の利回りの最低ライン
- 家賃や工事費が変わったときに、利回りがどれだけ動くか
不動産投資の利回りとは|表面・実質・税引き後の3つ
不動産投資の利回りとは、投じたお金に対して1年でいくら戻るかを割合で示したものだ。
ただし、何を引いて何で割るかによって、同じ物件でも数字がまったく変わる。よく使われるのは次の3つである。
| 利回りの種類 | 何を何で割るか | 使いどころ |
|---|---|---|
| 表面利回り | 満室の年間家賃 ÷ 物件価格 | 図面やポータルサイトに載る数字。物件をざっと比べる入口にだけ使う |
| 実質利回り | (年間家賃 − 空室・管理費・税・保険・修繕)÷(物件価格+購入諸費用+工事費) | 投資として成り立つかを判断する数字 |
| 税引き後の実質利回り | 実質の手残りから所得税・住民税を引いた額 ÷ 投じた総額 | 株や預金など、ほかの運用と同じ土俵で比べる数字 |
上位の解説記事の多くは、実質利回りまでで止まっている。
しかし会社員の場合、不動産の所得は給与と合算して課税される。税金を引く前の数字で株と比べると、不動産を実力以上に良く見てしまう。
この記事での決めごと:利回りは「税引き後の実質」を最終の判断材料にします。株は、仮に年4%で運用できるものとして比べます。株の4%は保証された数字ではなく、比べるための目安です。
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利回りの計算方法|戸建てで入れ忘れやすい費用
戸建て・空き家投資の利回りは、分母に「工事費と購入諸費用」を、分子から「空室と修繕の積立」を必ず入れて計算する。
中古の戸建ては、買ったあとにリフォームしないと貸せないことが多い。物件価格だけで割ると、利回りは何倍にも膨らんで見える。
この実質の手残りから、所得税と住民税を引いて同じ総額で割ると、税引き後の実質利回りになる。
| 入れ忘れやすい項目 | どこに入れるか | 見落とすとどうなるか |
|---|---|---|
| リフォーム費用 | 分母(投じた総額) | 利回りが数倍に見える。築古ほど差が大きい |
| 購入時の諸費用 | 分母 | 仲介手数料・登記費用・不動産取得税などが抜ける |
| 空室の期間 | 分子から引く | 戸建ては1戸なので、退去すると家賃がゼロになる |
| 修繕の積立 | 分子から引く | 給湯器やエアコンの交換で、その年の手残りが消える |
| 所得税・住民税 | 最後に引く | 給与と合算され、本業の税率で課税される |
区分マンションと違って、戸建てには管理費・修繕積立金の請求が来ない。
そのぶん自分で修繕のお金を積み立てておかないと、実質利回りを高く見積もってしまう。
熊谷市の戸建てで計算する|表面40%が税引き後4%台になるまで
リハコが再生した埼玉県熊谷市西城の戸建ては、物件価格だけで割れば表面40%、すべて入れた税引き後では約4.2%になる。
実績値は購入額・リフォーム額・家賃の3つだけだ。経費と税率は、計算のために置いた仮の数字である。
CASE熊谷市西城の戸建て|実績の3つの数字
- 購入額180万円実績値
- リフォーム額600万円実績値
- 家賃6万円月額・実績値
この3つに、下の表の仮置きの経費と税率を当てはめて、表面から税引き後まで順に計算する。
計算の前提(実績値と仮置きの数字)
| 項目 | 金額(年) | 根拠 |
|---|---|---|
| 年間家賃 | 72万円 | 実績(月6万円×12) |
| 購入額+リフォーム額 | 780万円 | 実績(180万円+600万円) |
| 購入時の諸費用 | 30万円 | 仮置き(仲介手数料・登記・不動産取得税など) |
| 空室による減収 | 6万円 | 仮置き(年に1ヵ月分空く想定) |
| 管理委託料 | 3.3万円 | 仮置き(入った家賃の5%) |
| 固定資産税・都市計画税 | 5万円 | 仮置き(実際は納税通知書の額に置き換える) |
| 火災・地震保険 | 3万円 | 仮置き |
| 修繕の積立 | 6万円 | 仮置き(家賃1ヵ月分) |
| 所得税+住民税の税率 | 約30.4% | 課税所得330万〜695万円の人の所得税20%(復興特別所得税を含め20.42%)+住民税10% |
出典:所得税の税率は国税庁「No.2260 所得税の税率」(2026年10月6日確認)。経費は物件ごとに違うため、検討する物件の実際の数字に置き換えてください。
この前提で、利回りを順に計算すると次のようになる。
| 段階 | 計算 | 利回り |
|---|---|---|
| 表面(物件価格だけ) | 72万円 ÷ 180万円 | 40.0% |
| 表面(工事費込み) | 72万円 ÷ 780万円 | 約9.2% |
| 実質(税引き前) | (72万円 − 経費23.3万円)÷ 810万円 = 48.7万円 ÷ 810万円 | 約6.0% |
| 実質(税引き後) | 48.7万円 −税14.8万円 = 33.9万円 ÷ 810万円 | 約4.2% |
同じ物件でも、割り方で利回りはここまで変わる
- 表面 40.0%物件価格だけで割る
- 表面 約9.2%工事費を分母に入れる
- 実質 約6.0%経費と諸費用を入れる
- 税引き後 約4.2%所得税・住民税を引く
※税金は、減価償却費を経費に入れない控えめな計算です(理由は後の章で書きます)。
40%という数字は、工事前の建物を180万円で買ったという事実を表しているだけだ。
投資の成績として見るべきなのは、最後の約4.2%のほうである。

この計算を、あなたの検討物件でもやってみませんか
所在地と写真があれば、工事の範囲と概算、そのエリアで決まる家賃の見立てをお出しします。表面から税引き後までの試算表にしてお送りします。
株の年4%と比べる|同じお金をどちらに置くか
熊谷市の実例の税引き後約4.2%は、株を年4%で運用できた場合とほぼ並ぶ水準だ。
株の利益には、NISAの枠外なら20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)がかかる。NISAの枠内なら非課税である。
| 運用先(810万円を置く) | 税引き後の利回り | 1年の手取り |
|---|---|---|
| 熊谷市の戸建て(前章の前提) | 約4.2% | 約33.9万円 |
| 株・NISAの枠内(年4%と仮定) | 4.0% | 約32.4万円 |
| 株・課税口座(年4%と仮定) | 約3.2% | 約25.8万円 |
出典:株式等の譲渡益の税率は国税庁「暮らしの税情報(株式・配当・利子と税)」(2026年10月6日確認)。株の4%は比べるための仮定で、実際の値動きとは関係ありません。
数字だけ見れば、不動産が少し上回る。
しかし不動産は、株のようにすぐ売れない。空室や修繕の手間もかかる。その手間と売りにくさの分だけ、株より上乗せがないと持つ意味が薄い、というのが現役の大家としての実感だ。
株と戸建て、同じ4%でも中身が違う
- すぐに売って現金にできる
- 持っている間の手間はほぼない
- 売るまでに時間がかかる
- 空室・修繕の対応が要る
逆に言えば、戸建ての良さは家賃が株価ほど毎日は動かないことにある。
株の値動きが不安で「形のある資産」に分けたい人にとっては、同じくらいの利回りでも、分散の意味は十分にある。分散の考え方は投資は「分散」がすべてで詳しく書いている。
利回りの最低ラインはどこか|税引き後4%から逆算する
不動産投資の利回りの最低ラインは、「税引き後の実質で、株の年4%を上回るか」で決めるのが分かりやすい。
よく「表面5%」「表面8%」といった目安が書かれているが、表面の数字は工事費や税金を含まない。人によって税率も違うので、表面だけで一律の線は引けない。
税引き後の実質利回りが、株を年4%で運用した場合を上回る?
熊谷市の例に当てはめると、工事費込みの表面利回りが約9.2%で、税引き後がようやく4%台だった。
つまりこの前提では、税引き後は表面のおよそ半分弱になる。図面で物件を探す段階なら、工事費込みの表面で9%前後を下回る物件は、税引き後で株に届きにくいと見当をつけられる。
| 税率(所得税+住民税) | 熊谷市の例の税引き後 | 株・NISA枠内4%との比較 |
|---|---|---|
| 約20.2%(所得税10%の人) | 約4.8% | 上回る |
| 約30.4%(所得税20%の人) | 約4.2% | わずかに上回る |
| 約33.5%(所得税23%の人) | 約4.0% | 並ぶ |
年収が高く税率が上がるほど、同じ物件でも税引き後の利回りは下がる。
だから最低ラインは、他人の目安ではなく、自分の税率で計算して決める。
市場の利回りの調査について:日本不動産研究所の「不動産投資家調査」は、主要都市の賃貸マンション一棟などに投資家が期待する利回りを調べたものです。大都市の新しめの建物が中心で、地方の築古戸建てとはそのまま比べられません。比べるなら、自分で計算した税引き後の数字どうしで比べてください。
自分の税率だと、どこが最低ラインになるか知りたい方へ
年収の目安と検討中の物件を教えていただければ、税引き後の手残りが株の4%に届くかを一緒に計算します。熊谷市の実例の試算表もお送りできます。
家賃と工事費が動くと、利回りはどう変わるか
戸建ての利回りを一番大きく動かすのは、決まる家賃と工事費の2つだ。
熊谷市の例の前提(税率約30.4%)のまま、片方だけを動かすと次のようになる。
| 変えた条件 | 工事費込みの表面 | 税引き後の実質 |
|---|---|---|
| 家賃が月5万円だったら | 約7.7% | 約3.4% |
| 実例(家賃6万円・工事600万円) | 約9.2% | 約4.2% |
| 家賃が月7万円だったら | 約10.8% | 約5.0% |
| 工事費が900万円に膨らんだら | 約6.7% | 約3.1% |
| 工事費を300万円に抑えられたら | 約15.0% | 約6.6% |
※家賃・工事費以外は前章までの仮置きの前提のまま計算。空室・管理委託料・修繕の積立は家賃に合わせて変えています。
家賃が月1万円下がるだけで、税引き後は株の4%を下回る。
工事費が300万円増えても同じだ。買う前に「決まる家賃」と「工事費の上限」を固めておくことが、利回りを守る一番の方法になる。
じゃあ、工事費は安ければ安いほどいいんですね。
削りすぎると、今度は家賃が下がったり入居が決まらなかったりします。家賃に効く場所にだけお金をかける、というのが正解です。
投資用リフォームの相場は、最低限50万〜150万円・標準500万〜700万円・フル700万〜1,000万円が目安だ。熊谷市の600万円は「標準」に入る。
どこまで直すかの判断は、空き家リフォームの費用相場と、どこまで直すかの判断基準で詳しく書いている。
減価償却と借入で、税引き後の数字は変わる
ここまでの税金は、減価償却費を経費に入れない控えめな計算だった。実際には、減価償却を取れる年は税が軽くなり、税引き後の利回りは上がる。
建物やリフォームの費用は、買った年に全額を経費にはできず、耐用年数に分けて毎年少しずつ経費にする。これが減価償却だ。
一方で、土地は時の経過で価値が減らない資産として、減価償却の対象にならない(国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」)。
| 税引き後を動かす要素 | 利回りへの効き方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 減価償却費 | 経費が増えて課税される所得が減り、税引き後が上がる | 償却が終わると税が重くなる。中古建物の耐用年数の決め方には決まりがある |
| 借入(リフォームローンなど) | 自己資金に対する利回りは上がる。利息は経費になる | 返済で毎月の手残りは減る。空室が続くと返済の負担が重い |
| 税率 | 年収が上がるほど、税引き後は下がる | 不動産の所得は給与と合算して課税される |
中古の建物は、法定耐用年数ではなく、残りの使用可能期間を見積もった年数で償却できる。見積もりが難しいときの簡便な計算方法もある。
ただし、事業に使う前にかけた工事費が大きい場合は簡便な方法が使えないなど、細かい決まりがある(国税庁「No.5404 中古資産の耐用年数」)。何年で償却するかは、買う前に税理士に確認しておくことをおすすめしたい。
熊谷市の物件は、リフォームローンを活用して、実際の手出しを約180万円ほどに抑えている。
借入を使えば自己資金に対する利回りは高く見えるが、そのぶん空室が続いたときの返済は重くなる。借り方の考え方は築古戸建て・空き家の融資の記事にまとめている。
税の判断は専門家と:減価償却の年数、建物と土地の価格の分け方、損益通算の扱いは、物件と個人の状況で変わります。この記事の計算は考え方を示すための控えめな試算です。実際の申告は、税理士や税務署にご確認ください。
工事費と家賃が先に分かっている物件で、利回りを計算しませんか
リハコは、仕入れの段階で工事の範囲と金額、そのエリアで決まる家賃まで数字にしてから物件をご紹介しています。税引き後の試算もあわせてお出しします。
図面の利回りを読むときの確認点
販売図面の利回りを見たら、「何で割った数字か」「家賃は実際の成約か想定か」「工事費は入っているか」の3つを最初に確かめる。
図面の利回りは、多くの場合、満室の家賃を売り出し価格で割っただけの表面利回りである。
| 確認すること | なぜ確かめるか | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 何で割った数字か | 売り出し価格だけで割っていれば、工事費の分だけ高く見える | 工事費の見積もりを足して、自分で割り直す |
| 家賃は成約か想定か | 空き家の「想定家賃」は、実際に決まる額より高いことがある | 地元の管理会社に、その広さと状態で決まる家賃を聞く |
| 工事費は入っているか | 築古は、床下・屋根・給排水の傷みで工事費が膨らむ | 内見で傷みを確かめ、1〜2割の予備費を足しておく |
| 税引き後で株に届くか | 税率は人によって違い、表面の目安では判断できない | 自分の税率で、この記事の順番どおりに計算する |
高すぎる表面利回りは、それ自体が確認すべきサインでもある。
極端に安い価格には、再建築ができない、接道が足りない、大きな修繕が要るなど、理由があることが多い。利回りの数字に飛びつく前に、その理由を探してほしい。失敗の形は不動産投資の失敗例と失敗率にまとめている。
工事費の見積もりや家賃の相場を、自分で調べるのは大変そうです。
最初の1件は、工事を知っている人と一緒に出すのが近道です。リハコでは、仕入れから工事まで同じ目線で数字を出しています。
まとめ|最低ラインは「税引き後で株に勝てるか」で決める
不動産投資の利回りは、どこで割るか、何を引くかで何倍にも変わる。
だから比べるときは、工事費・経費・税金まで入れた税引き後の実質にそろえる。
- 利回りは3段階で見る表面・実質・税引き後。株と比べるなら税引き後の実質を使う。
- 戸建ては工事費を分母に入れる物件価格だけで割ると、築古ほど利回りが何倍にも膨らんで見える。
- 熊谷市の実例は税引き後で約4.2%購入180万円・リフォーム600万円・家賃月6万円。表面40%、工事費込み約9.2%、実質約6.0%(経費は仮置き)。
- 株の年4%とほぼ並ぶNISA枠内の4%と同水準、課税口座の約3.2%は上回る。手間と売りにくさの分の上乗せも考える。
- 最低ラインは自分の税率で決めるこの前提では、工事費込みの表面で9%前後がようやく株と並ぶ水準。
- 家賃と工事費で大きく動く家賃が月1万円下がる、工事費が300万円増える、どちらでも4%を下回る。
- 減価償却と借入は税理士と確認償却を取れる年は税引き後が上がる。年数の決め方には決まりがある。
表面の数字で喜んでいたら危なかったです。自分の税率で計算し直してみます。
それが一番確実です。家賃と工事費が先に分かっている物件なら、計算もぐっと楽になります。
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