空き家リフォームの費用相場と、
どこまで直すかの判断基準
「空き家を買ったあと、リフォームにいくらかければいいのか分からない」
「調べると1,000万円と書いてあるが、投資でそれは回らない」

(宅地建物取引士)
アパート14棟・戸建て41戸を自ら運用する現役投資家
先に、この記事の結論を3行で書いておく。
- 投資用の空き家リフォームは「入居が決まる最低限」を基準にする|自分で住むためのフルリノベーション(1,000万〜2,000万円)とは、目的も金額も別物だ
- リハコの実例では、購入180万円+リフォーム600万円で、購入からおよそ4ヵ月で入居が決まっている(埼玉県熊谷市の戸建て)
- 判断基準は「家賃に効く箇所に集中し、効かない箇所は残す」|水回りの清潔感・内装の明るさ・第一印象、そして雨漏り・シロアリ・傾きの構造系はやる。それ以外は残す
この記事は、空き家を買う側(投資家)のための費用記事だ。
売却前提のリフォームとは判断がまったく変わるので、分けて書く。

空き家のリフォームって、結局いくら見ておけばいいんでしょうか。調べると幅が広すぎて分かりません。
幅が広いのは、目的が混ざっているからです。「住むため」と「貸すため」を分けると、見るべきレンジは一気に狭まります。
この記事を読んで理解できること
- 投資用の空き家リフォームの費用相場(最低限/標準/フルの3段階)
- 同じ空き家でも、投資用と居住用で金額が2倍以上ちがう理由
- 「やる/やらない」の判断基準(家賃に効くかどうかで切り分ける)
- リフォーム費用の良し悪しを「入居までの月数と家賃」で振り返る考え方
- リフォーム業者の選び方と、前金を払わない発注の仕方
- 空き家改修の補助金が、投資用でも使えるのかどうか
空き家リフォームの費用相場はいくらか
延床60〜80㎡の木造戸建てを貸すためにリフォームする場合、費用は3段階で考えると整理しやすい。
「最低限50万〜150万円」「標準500万〜700万円」「フル700万〜1,000万円」だ。
まず押さえておきたいのは、この幅は「どこまでやるか」で生まれる幅であって、業者の良し悪しで生まれる幅ではないということだ。
同じ物件でも、決める範囲が変われば金額は3倍動く。
だから最初にやるのは相見積もりではなく、段階を決めることだ。
| 段階 | やる工事 | 費用の目安(延床60〜80㎡・木造戸建て) |
|---|---|---|
| 最低限 | 残置物の撤去・ハウスクリーニング・クロスと床の張り替え・設備の部分補修・鍵交換 | 50万〜150万円程度 |
| 標準 | 上記に加えて、傷んだ水回り(キッチン・浴室・洗面・トイレ)のうち必要な箇所を交換し、内装を全面的にやり替える。電気系も新品にする | 500万〜700万円程度 |
| フル | 上記に加えて、間取り変更・屋根と外壁・給排水管の更新・断熱や床下の補修まで踏み込む | 700万〜1,000万円程度 |
| (参考)居住用フルリノベーション | 自分たちが住むための性能・仕様まで引き上げる | 1,000万〜2,000万円程度 |
いずれも目安だ。
地域の職人単価、物件の傷み具合、そして残置物の量で、同じ段階でも上下に振れる。
とくに築古の空き家では「開けてみないと分からない」部分が必ず残る。
見積もりが出た段階で、1〜2割の予備費を別に持っておくと安全だ。
この3段階のうち、投資用で中心になるのは「標準」である。
最低限だけでは入居が決まらず、フルまでやると投下資金が回収しきれなくなることが多い。
リハコが再生した熊谷市の戸建ては、水回り・内装・外構まで手を入れて600万円だった。表でいえば「標準」の範囲に収まっている。
傷みが大きければ、ここからさらに膨らむこともある。だからこそ、買う前に範囲と上限を決めておく。
見積もりが高く見えたら、まず「範囲」を疑う:見積もりが想定より高いとき、単価を叩くより先に、工事の範囲を見直すほうが効きます。「入居者が見ない場所」がフルの仕様で入っていないか、1行ずつ確認してみてください。範囲を1段階落とすだけで、100万円単位で変わることがあります。
検討中の物件で、どの段階まで直すべきか知りたい方へ
物件の傷み具合と、そのエリアで決まる家賃から、必要な工事の範囲を一緒に切り分けます。概算のお出しは無料です。
投資用と居住用でなぜ費用が違うのか
同じ空き家なのに、どうしてそんなに金額が変わるんですか?
ゴールが違うからです。居住用は「満足度」、投資用は「家賃と入居スピード」。回収する相手が、自分か入居者かの差です。
投資用と居住用でリフォーム費用が違うのは、判断の基準が「自分の満足度」か「家賃と入居スピード」かで分かれるからだ。
居住用のリノベーションは、10年20年と自分が住み続ける前提だ。
断熱・耐震・設備グレードといった「効いてくるのが遅い投資」まで含める意味がある。
一方、投資用でかけたお金は、家賃という形でしか戻ってこない。
家賃に反映されない工事は、どれだけ丁寧でも回収の当てがない工事になる。
ここが投資用リフォームの一番の勘所だ。
| 観点 | 居住用(自分が住む) | 投資用(貸す) |
|---|---|---|
| ゴール | 住み心地・所有する満足 | 家賃と、入居が決まるまでの速さ |
| 回収の相手 | 自分(回収という概念がない) | 入居者が払う家賃 |
| 費用の中心帯 | 1,000万〜2,000万円程度 | 500万〜700万円程度 |
| 優先するもの | 断熱・耐震・設備グレード・意匠 | 水回りの清潔感・内装の明るさ・第一印象 |
| 時間の考え方 | 納得いくまでかけられる | 工期が延びるほど家賃が入らない(最短2〜3ヵ月を目安にする) |
もうひとつ、投資用には「出口」という制約がある。
リフォームにかけた分は、そのまま売値に乗るわけではない。
地方の戸建てで売値が1,000万円を超えると、買主が一気に減る。
そのため物件価格+リフォーム費用の合計を、将来の売値から逆算して決めるという順序になる。
「いくらかけるか」ではなく「いくらまでなら回収できるか」。これが投資用リフォームの費用の決め方だ。
どこまでリフォームすべきか
投資用の空き家リフォームは、「家賃に効く箇所」と「構造の安全に関わる箇所」はやる。
「家賃に効かない箇所」は残す、という切り分けで決める。
入居者が内見で決め手にしているのは、ほぼ3つに絞られる。
水回りの清潔感、内装の明るさ、そして玄関を開けた瞬間の第一印象だ。
ここに予算を集中させ、家賃にほとんど影響しない部分は思い切って残す。
それが、限られた予算で入居を決めるための考え方になる。
投資用リフォームの「やる/残す」判断表
| 箇所 | 判断 | 内容 |
|---|---|---|
| 水回りの清潔感 | やる | 浴室・洗面・トイレ・キッチン。傷みが強ければ交換、使えるなら徹底的に磨いて部分交換 |
| 内装の明るさ | やる | クロスと床の全面張り替え、照明の増設。暗い和室は洋室化を検討する |
| 玄関まわりの第一印象 | やる | 玄関ドア・たたき・門扉・雑草の処理。内見の最初の3秒を作る |
| 雨漏り | やる | 屋根・雨樋・外壁からの浸水。放置すると躯体を傷め、退去理由にもなる |
| シロアリ | やる | 床下の食害と防除。入居後に出ると対応費用が跳ね上がる |
| 傾き・床下の腐食 | やる | 構造に関わるものは、買う前の調査で把握して工事に織り込む |
| 電気系 | やる | 分電盤・配線・コンセントは新品にする。火災リスクと入居後の呼び出しを同時に減らせる |
| 鍵の交換 | やる | 前所有者の合鍵が残っている前提で必ず替える |
| 設備のグレードアップ | 残す | 食洗機・浴室乾燥・高級水栓など。同じ家賃帯では決め手になりにくい |
| 意匠のこだわり | 残す | 造作家具、デザインタイル、無垢材への総入れ替え |
| 間取り変更 | 残す | 生活動線が破綻している場合を除き、壁を動かすと費用が跳ね上がる |
| 入居者が見ない場所 | 残す | 天井裏、小屋裏、使わない納戸の内装 |
| 2階の余っている居室 | 残す | クリーニングとクロスだけに留める判断もある |
| 外構の作り込み | 残す | 駐車スペースの確保は効くが、植栽やデザイン外構は効きにくい |
| 断熱・耐震の本格改修 | 残す | 居住用では価値があるが、家賃には反映されにくい |
「やる」は「やらないと入居が決まらない・後で高くつく」もの、「残す」は「やっても家賃が上がりにくい」ものです。迷ったら、そのエリアで実際に募集している競合物件の写真と並べて、勝てるかどうかで決めます。
この表で「残す」に入れたものは、永久にやらないという意味ではない。
予算に余裕が出たとき、あるいは競合が強いエリアで差をつけたいときには、残すからやるへ移すものが出てくる。
順番の話だと考えてほしい。
構造系は「買う前」に見る:雨漏り・シロアリ・傾きの3つは、買ったあとで見つかると計画が崩れます。内見の段階で床下と小屋裏をのぞき、天井のシミと建具の閉まり具合を確認してください。見つかった場合は、その修繕費がそのまま指値の根拠になります。
逆に言えば、ここで挙げた「やる」をすべてやり切ると、標準の500万〜700万円というレンジに収まってくる。
相場の中心が標準にあるのは、そういう理由だ。
この判断表を、ご自身の物件に当てはめたい方へ
写真と間取りをお送りいただければ、「やる/残す」の切り分けと概算をお出しします。現地に行けない遠方の方でも大丈夫です。
リフォーム費用は、入居までの月数と家賃で判断する
リフォームにいくらまでかけていいのか、どうやって見極めるんですか?
金額そのものではなく、その金額で「何ヵ月で」「いくらの家賃で」決まったかで見ます。
空き家の改修に補助金が出ると聞きました。投資用でも使えますか?
投資用リフォームの良し悪しは、掛けた金額の大小では決まらない。
同じ600万円でも、結果はまったく別になる。
数ヵ月で相場どおりの家賃が付いた物件と、長く空いたうえに家賃を下げて決めた物件の違いだ。
同じ600万円でも
- 相場どおりの家賃が付いた
- 工事範囲は正しかった
- 家賃を下げて決めた
- 家賃に効かない箇所にお金を回した可能性
だから振り返るときは、掛けた額に対して「何ヵ月で」「いくらの家賃で」決まったかをセットで見る。
この2つが想定どおりなら、その工事範囲は正しかったということだ。
逆に、入居までが長引いたり、想定より家賃を下げて決めたのなら、家賃に効かない箇所にお金を回していた可能性が高い。
次の物件では、そこを削る。
買う前の段階でも同じで、そのエリアで決まる家賃と、決まるまでの月数を先に置いてから、掛けられる金額の上限を決める。
掛けられる金額の決め方
- 家賃そのエリアで決まる家賃
- 月数決まるまでにかけられる月数
- 工事費の上限
- 指値の金額
熊谷市の実例を、4つの数字で振り返る
リハコが再生した埼玉県熊谷市の戸建てを、この見方で並べると次のようになる。
リフォームローンを活用したため、実際の手出しは約180万円ほどだった。
CASE熊谷市の戸建て|見るべき4つの数字
- 購入額180万円実績値
- リフォーム額600万円実績値
- 入居までの月数約4ヵ月購入から入居まで
- 家賃6万円月額
この4つが揃うと、工事の範囲が家賃に見合っていたかどうかを、あとから同じものさしで振り返れる。
次の物件の予算を決めるときも、この並びをそのまま使う。
順番を逆にする:「買ってからリフォーム費用を調べる」のではなく、「そのエリアで決まる家賃」と「決まるまでにかけられる月数」を先に置き、そこから掛けられる工事費の上限を決めて、指値の金額を出します。この順番にすると、高値掴みがほぼ起きなくなります。
リフォーム業者はどう選ぶか
投資用のリフォーム業者選びで最優先すべきは、価格の安さではない。
「前金を払わずに、工程ごとの出来高払いで進められるかどうか」だ。
築古の空き家再生でいちばん怖いのは、着工金を払ったあとで工事が止まることである。
持ち逃げされてしまうと、契約書があっても現実には戻ってこないことが多い。
裁判で勝っても、相手にお金がなければ回収できないからだ。
だから、支払い条件のほうを先に決める。
前金なし・出来高払いに応じる業者?
| 見るところ | 良い兆候 | 危ない兆候 |
|---|---|---|
| 支払い条件 | 前金なし。解体・大工・内装・設備など、終わった工程ごとの出来高払いに応じる | 着工前に半金や全額を求める |
| 見積書 | 部屋ごと・工種ごとに数量と単価が分かれている | 「内装一式」「リフォーム工事一式」で1行 |
| 追加費用の扱い | 「開けてみないと分からない箇所」を事前に列挙し、発生時の単価を先に決めてある | 着工後に「開けたら思ったより悪かった」と繰り返し追加が出る |
| 実績 | 賃貸用の再生実績があり、完了物件を見せられる | 実績が持ち家のリノベーションばかりで、賃貸のコスト感覚がない |
| 連絡 | 現場写真が定期的に届く | 連絡が途切れる。現場に行くと人がいない日が続く |
相見積もりは、金額を比べるためというより、範囲の食い違いを見つけるために取る。
3社から出てきた見積もりの金額差が大きいときは、たいてい安い側が何かを含んでいない。
同じ範囲に揃えてから比べないと、判断を誤る。
遠方の物件ほど、支払い条件が効きます:現場に頻繁に行けない場合、進捗の確認は写真と支払いのタイミングに頼ることになります。出来高払いにしておけば、工事が止まったときの損失をその工程までに抑えられます。前金なしに応じてもらえるかどうかは、業者を選ぶ最初の質問にしてよいくらい重要です。
なお、リフォーム見積もりの適正さを判断するには、同じ工事の相場を知っている第三者に見てもらうのがいちばん早い。
自分ひとりで単価表を作ろうとすると、最初の1棟で間に合わないことが多い。
リフォーム見積もりが適正か、第三者の目で確認したい方へ
お手元の見積書を拝見して、範囲の抜けと単価の妥当性を確認します。自社で100戸以上を再生してきた基準でお伝えします。
補助金は投資用でも使えるか
使える制度もありますが、条件付きのことが多いです。あると計画が崩れる前提で、無いものとして収支を組むのが安全です。
自治体の空き家改修補助金は、投資用(賃貸に出す目的)では対象外か、条件付きになっているものが多い。
制度は市区町村ごとに設計されていて、内容は毎年変わる。
それでも、傾向としては次のように分かれることが多い。
| 制度のタイプ | ねらい | 投資用での扱い(傾向) |
|---|---|---|
| 定住・移住促進型 | 市外からの転入者に住んでもらう | 「取得者本人が住むこと」が要件で、賃貸目的は対象外になりやすい |
| 空き家バンク連動型 | 空き家バンク登録物件の流通を促す | バンク経由での取得が条件。賃貸化を認める自治体もあるが、家賃上限や入居者要件が付くことがある |
| 賃貸化・住宅セーフティネット型 | 低所得者・高齢者・子育て世帯の住まいを増やす | 賃貸目的でも対象になり得るが、入居者を限定する・一定期間家賃を抑えるなどの制約が付く |
| 耐震・アスベスト・解体系 | 危険な建物を減らす | 所有者要件が緩い場合がある。ただし工事内容が限定される |
実務上、気をつけたいのは金額よりも時間と自由度だ。
補助金は多くの場合、着工前の申請と交付決定が必要で、決定を待つあいだ工事を始められない。
工期が1〜2ヵ月延びれば、その分の家賃が入らない。
また、指定の要件を満たす工事や、地元業者の使用が条件になっていることもある。
その結果、「やる/残す」の判断が制度側に引っ張られることがある。
だから、収支は補助金なしで成り立つように組み、通ったら利益が上乗せされる、という位置づけで扱うのが安全だと考えている。
確認する順番:まず物件所在地の市区町村の担当課(空き家対策・住宅政策など)に、①賃貸目的でも対象になるか、②申請から交付決定までどのくらいかかるか、③着工前申請が必要か、の3点を先に聞いてください。この3つで、使えるかどうかはほぼ判断できます。
リハコがこれまで再生してきた物件でも、改修の補助金は使っていない。収支はすべて補助金なしで組んでいる。
まとめ|投資用リフォームは「範囲」で決まる
投資用の空き家リフォームは、業者を叩いて安くするものではなく、やる範囲を先に決めて、そこに集中させるものだ。
そして範囲を決める基準は、最初から最後まで「家賃に効くかどうか」の一本でいい。
- 相場は3段階で押さえる延床60〜80㎡の木造戸建てで、最低限50万〜150万円、標準500万〜700万円、フル700万〜1,000万円が目安。投資用の中心は「標準」。
- 居住用のフルリノベとは別物自分で住むための1,000万〜2,000万円のリノベーションとは、ゴールも回収の相手も違う。投資用でかけたお金は家賃でしか戻らない。
- 家賃に効く箇所に集中する水回りの清潔感・内装の明るさ・第一印象、そして雨漏り・シロアリ・傾きの構造系はやる。設備グレードや意匠は残す判断もある。
- 費用は「月数と家賃」で振り返る工事費の良し悪しは金額の大小では決まらない。掛けた額に対して、何ヵ月で、いくらの家賃で決まったか。この組み合わせで毎回振り返る。
- 動かせるのは仕入れ値と工事費熊谷市の実例は購入180万円・リフォーム600万円・入居まで約4ヵ月。家賃はエリアで決まるため、買う前に詰めるべきは仕入れ値とリフォーム費用。
- 業者は支払い条件で選ぶ前金を払わず、工程ごとの出来高払いにする。相見積もりは金額よりも、範囲の食い違いを見つけるために取る。
- 補助金は無いものとして組む賃貸目的は対象外か条件付きのことが多く、着工前申請で工期も延びる。収支は補助金なしで成り立たせ、通れば上乗せと考える。
やる範囲を決めるところからつまずきそうです。最初の一歩は何をすればいいですか?
気になる物件を1つ決めて、この記事の判断表に当てはめてみてください。そのうえで、実際にいくらかかるかはリハコで概算をお出しします。
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