コラム COLUMN

相続した実家を売ろうとしたら、「この建物、登記されていませんね」と言われた——。
そんな場面で、多くの方が「売れないのでは」と不安になります。
先に結論からお伝えします。
未登記建物でも、売却は可能です。
ただし買主が住宅ローンを使えないという制約があるため、現実的な選択肢は次の二択になります。
①登記をしてから売る(一般の買主に届くが、費用と1〜2ヶ月の時間がかかる)/②未登記のまま、現金で買う投資家や買取業者に売る(費用ゼロで早いが、価格は市場相場より抑えめになる)。
どちらが得かは、土地の価値で決まります——この記事で、その判断基準まで具体的に解説します。
この記事のポイント
- 未登記建物でも売却はできる。ただし買主が住宅ローンを使えないため、売り方が限られる
- 表題登記は不動産登記法上の「義務」。放置すると10万円以下の過料の対象になる
- 土地値が高ければ登記してから仲介、低ければ未登記のまま買取。費用対効果で決める
執筆者:未登記物件も扱う現役投資家

自らアパート14棟・戸建て40戸(計134戸)を運用する現役の不動産投資家であり、宅地建物取引士です。
未登記・書類不足の物件を整理しながら買い取ってきた実務経験から、「登記がない家」の現実的な売り方を解説します。

この記事の目次
1. 未登記建物とは?「家を登記してない」状態を正しく理解する
1-1. 表題登記がされていない建物のこと
未登記建物とは、登記簿(登記記録)そのものが存在しない建物のことです。
建物の登記は大きく二段構えになっていて、まず「表題登記」で建物の物理的な情報を登録し、その後「所有権保存登記」で誰のものかを記録します。
| 登記の種類 | 記録される内容 | 担当する専門家 |
| 表題登記(表示登記) | 所在・家屋番号・種類・構造・床面積など建物の物理的な情報 | 土地家屋調査士 |
| 所有権保存登記 | その建物が誰のものか(所有者の氏名・住所) | 司法書士 |
一般に「未登記建物」と呼ばれるのは、この最初の表題登記すらされていない状態です。
土地は登記されているのに建物だけ未登記、というケースがほとんどで、固定資産税は自治体が独自に家屋調査をして課税しているため、税金だけは払い続けている——という状況がよく起こります。
「固定資産税を払っているのに登記されていないなんて」と驚かれる方が多いですね。課税と登記は別の制度なので、じつは珍しいことではないんです。
1-2. 未登記が起きやすいのは「古い家」と「増築部分」
未登記建物が生まれる典型的なパターンは、次の3つです。
昭和期に住宅ローンを使わず自己資金や親族間の資金で建てた家
金融機関の関与がないと、登記を促す人が誰もいないまま完成してしまいます
増築部分だけが未登記
母屋は登記されているのに、後から建てた離れ・車庫・物置・二世帯化した増築部分が登記されていないケース。実務では最も多いパターンです
相続が繰り返され、誰も気づかないまま数十年経った家
祖父の代の建物が未登記のまま孫の代に引き継がれている例もあります
とくに増築の未登記は、売却の直前に判明して手続きが止まることが多い問題です。
母屋の登記簿上の床面積と、現況の床面積が食い違っていれば、その差が未登記部分ということになります。
1-3. 自分の家が未登記かどうかを確認する2つの方法
確認は自分でもできます。
手元の書類と、法務局の証明書の2ステップです。
未登記かどうかの確認手順
①固定資産税の納税通知書(課税明細書)を見る:家屋の欄に「未登記」「家屋番号なし」と記載されていれば未登記です。
家屋番号の欄が空欄・ハイフンになっている場合も同様のサインです。
②法務局で登記事項証明書を取得する:土地の地番を伝えて建物の登記事項証明書を請求し、「該当なし」と言われれば未登記が確定します。
窓口・郵送・オンライン(登記・供託オンライン申請システム)で誰でも取得でき、手数料は1通あたり数百円です。
登記の制度全般については法務局の不動産登記の案内でも確認できます。
まずは納税通知書を探すところから始めてください。
2. 未登記のまま放置する4つのリスク
「今すぐ困っていないから」と放置されがちですが、未登記は時間が経つほど解消が難しくなる問題です。
主なリスクを4つ挙げます。
2-1. 表題登記は義務。10万円以下の過料の対象になる
意外と知られていませんが、建物の表題登記は不動産登記法で定められた義務です。
同法47条は、建物を新築した所有者に対し、取得の日から1ヶ月以内に表題登記を申請しなければならないと定めています。
これを怠った場合、同法164条により10万円以下の過料の対象となります。
実際に過料が科された例は多くありませんが、「義務違反の状態が続いている」という事実は変わりません。
売却時に買主から指摘される要素にもなります。
過料を過度に怖がる必要はありませんが、「義務ではない」と誤解したまま放置するのは危険です。相続が重なるほど、あとで登記する手間は増えていきますから。
2-2. 2024年4月の相続登記義務化との関係
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。
相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請をしないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象となります(法務省|相続登記の申請義務化について)。
ここで注意したいのが、未登記建物は「相続登記をしようにも、登記する対象そのものが存在しない」という点です。
まず表題登記を入れて登記簿を作り、そのうえで所有権保存登記を行う——という段取りになります。
義務化の施行から2年が経った2026年は、この施行前の相続分についても猶予期限が近づく時期にあたります。
相続全体の流れは親が亡くなったときの家の手続きで整理しています。
あわせてご覧ください。
2-3. 売却・担保・相続手続きが軒並み止まる
実務上、いちばん深刻なのがこれです。
登記簿がない建物は、公的に「所有者が誰か」を証明できません。
その結果、次のような支障が生じます。
買主が住宅ローンを使えない
金融機関は建物に抵当権を設定できないため、原則として融資しません。これが未登記物件の売却が難しくなる最大の理由です
自分も担保に入れられない
リフォームローンや事業資金の担保として使えません。根抵当権など担保設定の前提が整いません
相続手続きが煩雑になる
遺産分割協議書に建物を特定して記載する際、家屋番号がないため固定資産税の課税明細に基づく記載が必要になります
時間が経つほど所有権の証明が困難に
建築時の書類が失われ、当時を知る人がいなくなると、表題登記に必要な所有権証明書類が揃わなくなります
2-4. 第三者に権利を主張できない
登記には「対抗力」という機能があります。
登記がなければ、その建物が自分のものだと第三者に法的に主張できません。
実際にトラブルになる頻度は高くないものの、権利関係が不安定な状態が続いていることは事実です。
訳あり物件の売却で扱う他の問題(境界未確定・共有名義など)と重なると、解決の難易度はさらに上がります。
3. 未登記建物を売る2つの方法
ここからが本題です。
未登記建物の売り方は、大きく2つに分かれます。
3-1.【方法①】表題登記→所有権保存登記をしてから売る
登記を整えてから売る、正攻法です。
登記さえ入れば、買主は住宅ローンを使えるようになり、一般のマイホーム購入層に売却できるようになります。
手順は次のとおりです。
所有権を証明する書類を集める
(後述の4章で詳しく解説します)
土地家屋調査士に表題登記を依頼する
現地調査・図面作成(建物図面/各階平面図)を経て法務局へ申請。ここで初めて登記簿が作られます
司法書士に所有権保存登記を依頼する
所有者として自分の名義を記録します
不動産会社に売却を依頼する
ここで通常の仲介売却が可能になります
未登記建物を登記する費用と期間の目安
表題登記(土地家屋調査士):7万〜15万円程度
所有権保存登記(司法書士報酬):3万〜5万円程度
登録免許税:固定資産税評価額の0.4%(保存登記の場合)
期間の目安:おおむね1〜2ヶ月
費用は建物の規模・構造・書類の揃い具合で変動します。
増築部分だけの登記(表題部変更登記)であれば、これより安く収まることも多いです。
まずは土地家屋調査士に現況を見てもらい、見積もりを取るのが確実です。
書類が揃っていれば1ヶ月ほどで終わります。逆に建築確認済証も何も残っていない場合は、証明書類を集める段階で時間がかかることがありますね。
3-2.【方法②】未登記のまま、現金買取に売る
もうひとつが、登記をせずにそのまま売る方法です。
買主が住宅ローンを使わない——つまり現金で買える相手であれば、未登記のままでも取引は成立します。
具体的な買主は、不動産投資家・買取業者・隣地所有者などです。
彼らは融資を前提としないか、あるいは購入後に自分で登記を入れる前提で動くため、未登記であることが決定的な障害になりません。
メリットは明快で、登記費用がかからず、1〜2ヶ月の待ち時間もないこと。
相続税の納付期限が迫っている、遠方で何度も足を運べない、といった事情がある方には現実的な選択肢です。
一方で、買主が引き受けるリスク・手間の分、価格は市場相場より抑えめになる点は理解しておく必要があります。
3-3. 2つの方法を比較する
| 比較項目 | ①登記してから売る | ②未登記のまま買取に売る |
| 買主の対象 | 一般のマイホーム購入層+投資家 | 現金で買える投資家・買取業者・隣地所有者 |
| 住宅ローン | 買主が利用できる | 買主は利用できない |
| 売主の初期費用 | 10万〜20万円程度+登録免許税 | 原則かからない |
| 売却までの期間 | 登記1〜2ヶ月+売却活動期間 | 最短で数週間 |
| 想定される価格帯 | 市場相場に近づきやすい | 相場より抑えめになりやすい |
| 手続きの手間 | 書類収集・専門家の手配が必要 | 買主側で対応できることが多い |
| 向いている人 | 土地の価値が高く、時間に余裕がある人 | 早く手放したい人・土地値が低い地域の人 |
どちらが正解ということはありません。
「登記費用をかけた分、売却価格が上がるかどうか」——判断軸はこれに尽きます。
5章で具体的な考え方をお伝えします。
「まだ売ると決めたわけではない」段階のご相談で構いません。
未登記のままの状態で、どんな選択肢があるのかだけでもお伝えできます。
4. 相続した未登記建物の手続きと必要書類
相続をきっかけに未登記が判明するケースがいちばん多いため、この章では相続の場面に絞って手続きを整理します。
4-1. 表題登記に必要な「所有権証明書類」
表題登記では、その建物が確かに自分(被相続人)のものであることを示す書類が必要になります。
以下のうち、一般に複数点を組み合わせて提出します。
- 建築確認済証・検査済証——最も強い証明書類です。まず探すべきものと考えてください
- 固定資産税の納税通知書・課税明細書・固定資産課税台帳(名寄帳)——自治体が課税してきた実績の証明になります
- 工事請負契約書・工事代金の領収書——誰が費用を負担して建てたかを示します
- 施工業者の工事完了引渡証明書(業者が現存する場合)
- 被相続人の戸籍謄本一式・相続人の戸籍謄本・住民票——相続関係を示す書類
- 遺産分割協議書(相続人全員の実印・印鑑証明書付き)
書類が何も残っていない場合でも、あきらめないでください
建築確認済証が失われていても、固定資産課税台帳(名寄帳)の写しや、建築計画概要書(自治体の建築指導課で取得)、近隣住民の証明書などを組み合わせて登記できる場合があります。
判断は法務局の運用にもよるため、まず土地家屋調査士に「手元にある書類だけ」を見せて相談してください。
「書類がないから無理」と自己判断で結論を出すのが、いちばんもったいない対応です。
4-2. 遺産分割協議書への記載方法
未登記建物は登記簿がないため、登記事項証明書の内容を書き写すという通常のやり方が使えません。
代わりに、固定資産税の課税明細書に記載された内容を用いて建物を特定します。
具体的には「所在(地番)/種類/構造/床面積」を明記し、末尾に「(未登記)」と付記するのが一般的な書き方です。
この記載が曖昧だと、後の表題登記や売却時に「この協議書はどの建物のことか」で揉める原因になります。
相続人が複数いる場合はとくに、司法書士に文案を確認してもらうことをおすすめします。
協議書に建物を書き忘れて土地だけ分割していた——というケース、実務で本当によく見ます。相続人が集まれるうちに、未登記の建物も必ず入れておいてください。
4-3. 相続人が複数・行方不明の場合
相続人全員の同意がなければ、遺産分割協議は成立しません。
連絡が取れない相続人がいる、認知症で判断能力が低下している方がいる、といった場合は、不在者財産管理人や成年後見人の選任といった手続きが必要になります。
時間はかかりますが、放置すればさらに相続人が増えて難しくなるだけです。
世代が下がるほど関係者が増える——これが未登記・未相続の物件で共通して起こることです。
5. 登記するか、しないか——費用対効果で判断する
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい判断軸です。
結論をシンプルに言うと、「土地の価値が高ければ登記してから仲介、低ければ未登記のまま買取」——この一点で決められます。
5-1. 登記してから売るべきケース
駅近・都市部など、土地の需要が高いエリア
マイホーム購入層が買える状態にすることで、売却価格が登記費用を大きく上回って伸びる可能性があります
建物が比較的新しく、そのまま住める状態
実需層(自分で住む買主)が付きやすく、住宅ローンの有無が価格に直結します
売却を急いでいない
1〜2ヶ月の登記期間を待てる余裕がある
所有権証明書類が手元に揃っている
登記がスムーズに進み、追加費用も抑えられます
5-2. 未登記のまま売ったほうが合理的なケース
郊外・地方など土地値が低いエリア
10万〜20万円の登記費用を投じても、売却価格がその分上がるとは限りません
建物が老朽化して、買主が解体前提で買う
建物に価値がない以上、登記は買主にとっても重要度が下がります。古い家を売る方法もあわせてご覧ください
再建築不可・既存不適格など、他にも制約がある
もともと住宅ローンが付きにくい物件です。既存不適格物件の売却と同様、買主は投資家が中心になります
相続税の納付期限が迫っている・遠方で動けない
スピードが最優先の場面です
所有権証明書類が揃わない
登記自体に時間と追加コストがかかります
「とりあえず登記しておけば安心」と20万円かけたのに、売却価格が変わらなかった——というのがいちばん残念なパターンです。順番は逆で、まず査定を取ってから登記するかどうかを決めましょう。
5-3. 迷ったら「登記前に査定を取る」
判断に迷ったときの実務的な進め方は、登記する前に、未登記の状態のまま査定を取ることです。
「登記した場合の想定価格」と「未登記のままの価格」を並べれば、登記費用をかける価値があるかどうかが数字で見えます。
先に登記してしまうと、この比較ができません。
順番を間違えないこと——それだけで数十万円の判断ミスを防げます。
6. リハコなら、未登記のままでもご相談いただけます
リハコは、未登記の建物を対象物件として明記している買取・仲介会社です。
「登記を済ませてから来てください」とお断りすることはありません。
未登記のままの状態で査定し、そのまま買い取ることもできます。
進め方は、①まず仲介で買い手(多くは投資家)を探す → ②見つからなければリハコ自身が買い取る、という二段構えです。
仲介で売れればより高い価格が期待でき、売れなくても買取という出口が確保されている——「売れ残る心配がない」形でご相談を始めていただけます。

買取後は、私たちの側で表題登記から所有権保存登記まで整理し、リノベーションして次の入居者へつなぎます。
解体して更地にするのではなく、家として再生する——だからこそ、建物に手をかける前提で価格を検討できます。
「未登記なんですが、相談していいですか」というお電話、毎月いただきます。もちろん大丈夫です。まず状況を教えてください——登記すべきかどうかも含めて、一緒に整理しましょう。
ご相談はメールでもお電話(0120-228-590)でも受け付けています。
登記の要否だけを知りたい、という段階でも構いません。
よくある質問
Q. 未登記の建物は、本当に売却できるのですか?
できます。
ただし買主が住宅ローンを使えないため、現金で購入できる投資家・買取業者・隣地所有者が主な買主になります。
一般のマイホーム購入層にも届けたい場合は、表題登記と所有権保存登記を済ませてから売却するのが確実です。
Q. 表題登記の費用はいくらかかりますか?
土地家屋調査士への報酬が7万〜15万円程度、続く所有権保存登記の司法書士報酬が3万〜5万円程度、加えて登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)が目安です。
建物の規模・構造・書類の揃い具合で変わるため、まず見積もりを取ってください。
増築部分だけの登記であれば、これより安く収まることもあります。
Q. 未登記のまま放置すると罰則はありますか?
あります。
建物の表題登記は不動産登記法47条で義務とされ、怠った場合は同法164条により10万円以下の過料の対象です。
また2024年4月からは相続登記も義務化され、こちらも正当な理由なく3年放置すると10万円以下の過料の対象となります。
Q. 建築確認済証などの書類が一切残っていません。登記できますか?
できる場合があります。
固定資産課税台帳(名寄帳)の写し、自治体で取得できる建築計画概要書、工事代金の領収書、近隣住民の証明書などを組み合わせて所有権を証明する方法があります。
法務局の運用にもよるため、手元にある書類だけを持って土地家屋調査士に相談してください。
Q. 母屋は登記済みで、増築部分だけが未登記です。売却できますか?
売却は可能ですが、登記簿の床面積と現況が食い違うため、買主・金融機関から指摘される可能性があります。
実務では「表題部変更登記」で増築部分を追加するのが一般的で、建物全体を新規登記するより費用は抑えられます。
買取であれば、そのままの状態でご相談いただけます。
まとめ:未登記でも、売る道は必ずあります
この記事のまとめ
- 未登記建物とは、表題登記がされていない建物。固定資産税の納税通知書と登記事項証明書で確認できる
- 表題登記は法律上の義務で、10万円以下の過料の対象。相続登記義務化とあわせて放置は不利になる
- 売り方は「登記してから仲介」か「未登記のまま現金買取」の二択。登記する前に査定を取って判断する
未登記であることは、売却を諦める理由にはなりません。
大切なのは、登記費用をかける価値があるかを先に見極めること——その順番さえ間違えなければ、余計な出費は防げます。
「登記していない家をどうすればいいか分からない」という段階で構いません。
状況の整理だけでも、一度お話をお聞かせください。
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