コラム COLUMN

相続したアパートは、ゴミ屋敷でも、全室が空いていても、登記が親の名義のままでも売れます。
片づけてから、直してから、話がまとまってから。その順番を守ろうとして止まる方が最も多いのが相続物件です。現況のまま買い取った現場の写真とあわせて整理します。
この記事のポイント
- 残置物の処分・修繕・立ち退きを、売主が先に済ませる必要はありません。ゴミが残ったまま買い取った実例があります。
- 売却の前提は相続登記です。2024年4月から義務化され、3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象です(施行前の相続にも適用)。ただし査定は並行して進められます。
- 兄弟の共有名義は全体を売るのに全員の同意が必要です。判断材料は「一人あたりいくら残るか」という数字です。
執筆者:アパート14棟を運用する現役大家

自らアパート14棟・戸建て40戸(計134戸)を運用する現役の不動産投資家です。
買う側・売る側の両方の経験から、築古アパートの出口を解説します。
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この記事の目次
1. 相続物件で最も多いのは「この状態では売れない」という思い込みです
親が持っていたアパートは、たいてい状態が良くありません。長く空いていた部屋、家財が残ったままの部屋、家賃が入っていない部屋。
そこで「まず片づけて、直して、それから売ろう」と考えると、費用と手間が先に立ちはだかります。結果として何年も動かないまま、固定資産税だけが出ていきます。その順番は不要です。
2. 現況のまま買い取った相続物件の実例
2-1. 家財と生活ゴミが残ったままの部屋(小田原市)

退去後もゴミが残っていた部屋です。実家の片づけと同じで、手を付けられないまま時間が過ぎていました。

和室にも家財が積み上がったままです。この状態のまま買い取り、残置物の処分は当社で行いました。処分費用の立て替えは不要です。

外廊下にも私物が残ったままです。仲介では内見の段取りから難しくなりますが、買主本人が直接見るなら支障ありません。
2-2. シロアリ・害獣の被害があった棟(横須賀市)

床下に潜って状態を確認しました。相続した建物は、床下や屋根裏の状態が誰にも分からないのが普通です。調べていないこと自体は、売れない理由になりません。

長く空室だった部屋です。募集を止めたまま何年も置かれていた部屋も、そのまま引き受けられます。
2-3. 全室が空いていた1Kアパート/畳の傷んだ和室

相模原市の台所です。全空で引き受けました。買う側には、全戸をまとめて工事できるぶん扱いやすい状態です。

座間市の空室です。評価は今の家賃ではなく、直した後の想定家賃から逆算します。
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3. 登記・共有・滞納。相続ならではの「訳あり」
3-1. 相続登記が済んでいない(2024年4月から義務化)
2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請する必要があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。この義務は施行前の相続にも適用され、「10年前に相続したまま」も対象です。
手続きは、戸籍を集めて相続人を確定し、遺産分割協議書に全員が署名・押印して法務局に申請する流れです。代が飛んでいる場合は司法書士に任せるほうが早く済みます。
ただし、登記が終わるのを待ってから査定を取る必要はありません。並行して進めるほうが、家族の話し合いも早くまとまります。
3-2. 兄弟の共有名義になっている
とりあえず法定相続分で共有にしておく形は、売却の場面で最も動きにくくなります。共有不動産の全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です。持分だけを売ることもできますが、買う相手は限られ、金額も下がります。
共有者が亡くなれば持分がさらに相続されるため、時間が経つほど難しくなります。整理は、残したい人が他の持分を買い取る、全体を売って代金を分ける(換価分割)、一人が取得して他に金銭を払う(代償分割)の3つです。
判断の材料は「売ったらいくら残るのか」という数字です。リハコは一人あたりいくらかまで整理してお伝えします。
3-3. 滞納している部屋がある/サブリース付き/残債がある
相続してみたら家賃が入っていない部屋があった、というご相談は珍しくありません。督促や明け渡しを相続人が進めるのは負担が大きすぎます。リハコは滞納分を織り込んで判断し、入居者ごと引き受けます。
サブリース契約が付いていても、引き継ぐか解約するかは買主側で整理します。残債も、売却代金から返済して抵当権を抹消します。
3-4. 市街化調整区域・再建築不可・雨漏り・擁壁
親の代に建てた棟は、現在の基準では建て替えられないことがあります。市街化調整区域は新たな建築が制限され、建築基準法上の道路に2m以上接していない敷地は再建築不可です。どちらも融資が付きにくく、仲介では買主が見つかりません。
ただし「建て替えられない」と「売れない」は別です。壊さず直して貸す前提なら収益物件として成立します。雨漏りや傾き、擁壁・崖地も、現地で確認して織り込んだ金額をお出しします。
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4. 税金:譲渡所得・取得費・特例・相続税の10ヶ月
以下は制度の概要です。実際の計算と適用の可否は必ず税理士にご確認ください。
4-1. 譲渡所得と、所有期間の引き継ぎ
売って利益が出ると譲渡所得として課税されます。対象はおおまかに「売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)」で、税率は5年以下の短期と5年超の長期で異なります。相続では亡くなった方の所有期間を引き継ぐため、親が長く持っていたなら相続直後でも長期の扱いです。
4-2. 取得費が分からないときは売却価格の5%
取得費が不明な場合は、売却価格の5%を取得費とみなして計算します(概算取得費)。つまり残りの95%が利益として扱われます。
古い売買契約書・登記済権利証・建築時の請負契約書は捨てないでください。取得費の証明になります。現況のまま売るなら室内を片づける必要がなく、急いで処分して書類まで失う心配もありません。
4-3. 取得費加算の特例と、相続税の申告期限10ヶ月
相続税を納めた方が一定期間内に売却した場合、納めた相続税の一部を取得費に加算できる特例があります。この特例には期限があり、相続税の申告期限(相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月)の翌日から3年を経過する日までに売却することが要件とされています。
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5. 遠方に住んでいて現地に行けないときの進め方
「横浜のアパートを相続したが、自分は関西にいる」。これが一番多い制約ですが、行かなくても進められます。査定は住所と物件情報で概算が出せ、現地確認はリハコが行って写真と所見をお送りします。
室内の荷物の片づけも不要です。一方、持っているだけで固定資産税・火災保険料・管理費は出ていき、建物は使われないほど傷みます。
株式会社リハコは仲介ではなく買主本人です。手数料はかからず、入居者や荷物が残っていても構いません。金額は、残債・敷金・精算金を差し引いた手取り額を先にお見せします。
6. まとめ|片づける前に、今の状態で聞いてください
この記事の写真は、どれも売主が手を入れていない状態のものです。ゴミも、シロアリも、全空も、価格が付かない理由にはなりませんでした。放っておいて良くなる要素はありません。
この記事のまとめ
- ゴミ・家財・シロアリ被害・全空でも、現況のまま買い取った実例がある。片づけや修繕を売主が先に負担する必要はない
- 売却の前提は相続登記。2024年4月から義務化され過去の相続にも適用されるが、査定は登記の整理と並行して進められる
- 共有は全員の同意が要り、時間が経つほど関係者が増える。税務は取得費の資料が鍵(不明なら概算取得費は売却価格の5%)
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大手企業のサラリーマンを経て、不動産再生の世界へ。自らアパート14棟・戸建て41戸(計135戸)を運用する現役投資家・宅地建物取引士として、累計200戸以上の空き家・築古物件を買い取り、再生してきました。日々「手放したい売主様」と「買いたい投資家様」の間に立つからこそ、他社で値段がつかなかった物件にも、根拠ある価格と確かな出口をご提案できます。

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